introduction
「定年って生前葬だな…」
衝撃的な書き出しで始まる内館牧子のベストセラー小説
「終わった人」がついに映画化!
大河ドラマ「毛利元就」や、NHK連続テレビ小説「ひらり」など、数々の脚本を手がけ、ヒット作を世に送り出してきた内館牧子が、定年したエリートの悲哀を綴り大きな反響を呼んだ「終わった人」。主演には、定年を迎え世間から“終わった人”と思われるようになった主人公・田代壮介役に舘ひろし。かつての輝きを失った夫と向き合えない美容師の妻・千草役を黒木瞳が演じる。そして、メガホンを取るのは『リング』や『仄暗い水の底から』など、数々のホラー作品で観客を震え上がらせ、ハリウッドで『ザ・リング2』を監督して世界を席巻した中田秀夫。今回初めて、笑えて、そして泣ける人間喜劇に挑戦する。原作に惚れ込み、「本当に撮りたかった作品」と力強く語る中田監督自らが映画化権取得に動いた本作には、並々ならぬ熱量と想いが込められている。定年という生前葬を迎え、毎日が大型連休になった主人公が「もっと仕事がしたい」「このままでは終われない!」という想いを抱え、第二のキャリアを築くために、戸惑い、足掻き、奮闘する中で、出会う様々な人々とのつながりや、一筋縄ではいかない夫妻の在り方がリアルに表現されていく。ベストセラーとなった内館牧子の「終わった人」が、中田監督によってどう映像化されるのか?味わい深い人間ドラマであり、ハートフルかつ大人の上質なコメディをご堪能ください。story
大手銀行の出世コースから外れ、子会社に出向させられたまま定年を迎えた田代壮介。これまで仕事一筋だった壮介は途方に暮れる。日々、やることがない。時間の進みが遅すぎる…。このまま老け込むのはマズイと感じ、スポーツジムで身体を鍛え直したり、図書館で時間を潰そうとするのだが、よく見ると周りにいるのは “終わった”ように見えてしまう老人ばかり…。美容師として忙しく働く妻・千草には、ついグチをこぼし、次第に距離を置かれてしまう。
「俺はまだ終われない」と、職業安定所で職探しを始めるも、高学歴と立派な職歴が邪魔をして思うように仕事が見つからない。妻や娘からは「恋でもしたら?」とからかわれる始末…。そんな時、大学院で文学を学ぼうと思い立った壮介が、勉強のために訪れたカルチャースクールで出逢った女性と恋の予感が…。また、スポーツジムで知り合った新興のIT企業社長との出会いにより、壮介の運命の歯車が回り出す──。comment
舘 ひろし / コメント
30年間演じた“刑事”を定年退職してから“再就職先”を探していました。今度の“職場”は、ハーレーに乗ってショットガンを打つシーンとは無縁です。主演として関わる映画は『終わった人』というかなりネガティブなタイトルですが、定年退職した私がコミカルに見えて笑えて、最後にジーンとくる映画になると思います。どうやって人生を終わっていくかは、誰にとってもいずれ訪れる時に向かって、誰とも違う自分なりの時の過ごし方を見つけていくことだと思っています。私自身は、この物語を“再挑戦”と定義して演じました。ですから実際に、もうかなり歳ですが、いやこの歳になったからこその新しい“舘ひろし”をご覧いただけるのではないでしょうか。中田監督とは初めてのお仕事、黒木瞳さんとは四度目の共演、内館牧子さんの原作映画は二度目、縁ある方々に囲まれ、とても良い作品になる手応えがあります。
黒木 瞳 / コメント
中田秀夫監督とは三作品目の映画となります。しかも、今回はホラーではない。定年を迎えた夫と、その妻のサバイバル。考えてみれば、「ああ、これもれっきとした“夫婦のホラー話”かもしれないな」と、興奮して撮影初日を迎えました。青春朱夏、そして白秋の年代となった夫婦を、舘ひろしさんと共に演じることができるなんて最高にうれしいです。舘さんとは20代の頃からご一緒しているので、安心感は半端ないです。その懐に飛び込み撮影に臨みました。本作品は、監督自ら原作に惚れ込まれ映画化になったと伺っております。「撮影がないときは、“終わった人”みたいな生活をしているんです」と、話されていたお茶目な監督と、キュートな舘ひろしさん、映画の完成に期待で胸がいっぱいです。
原作内館牧子 / コメント
「中田秀夫監督が、この原作をぜひ撮りたいとおっしゃっています」
こう連絡があった時、からかわれているのかと思った。卓越したホラー作品で世界を魅了している中田監督が、まさか「終わった人」を!? 本当のことだと知り、これは予測ができない面白さになるとドキドキした。同時に「シナリオは私が書くべきではない。オール中田組で」と考えたのは当然である。その後、主人公は舘ひろしさん、その妻は黒木瞳さんとうかがい、もう早くも横綱相撲で勝ったと思った。私はお二人とは、過去に仕事をご一緒しており、原作をさらにふくらませて下さる力量を実感させられている。監督、脚本、スタッフ、キャストのベストメンバーが、日本の原風景を残す盛岡と、生き馬の目を抜く東京を舞台に、「人は終わらないものだ」という頼もしさをお届けできるのは間違いない。
監督中田秀夫 / コメント
“ホラー映画の中田”が何故「終わった人」の映画化を熱望したか?
それは、「一目惚れ」だった。「定年って生前葬だな…」冒頭の一行、花束を持った何か言いたげな主人公の装画に完全にヤラレた。私がそれらに“ピンと来る”年齢に達したからか?だが実は、この主人公は「終わった」後も、社会で必要とされ、仕事で戦うことを熱望し、懸命に足掻く。その姿にも惚れた。映画化に当たっては、第二のキャリアで出会う、様々な相貌の人たちとのドタバタ喜劇感、お互い一筋縄ではいかない主人公夫妻のリアルな愛情関係に重心を置いた。(この愛情にも大きな亀裂が走るのだが…)いま、参照のため洋画のロマンティック・コメディを見続けている。テンポ良い面白おかしさが「気持ちは若くて柔らか」である“終わった人”の「生命線」だと思う。惚れ込んだ内館さんの原作を基に、脚本の根本さんたちとは議論を尽くした。初タッグを組ませていただく舘さん、三本目の黒木さんたちと共に、観客の皆さんが「そうだ!」と膝を打つ【人間喜劇】を紡いでいきたい。